心の病 30代に忍び寄る
心の病 30代に忍び寄る
【2006年10月3日付毎日新聞より抜粋・引用】
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【2006年10月3日付毎日新聞より抜粋・引用】
「心の病」が30代の会社員をむしばんでいるという。職場と家庭の両立など、もともとストレスがたまりやすい年代ではあるが、さらに終身雇用が崩壊し、実力重視の成果主義が幅を利かせる世相の中で育った。景気が上向いてきたとされる今、うつ病や神経症にも至るという今どき30代の負担の原因は何なのか…。
■ストレスたまる世代
東日本の100万都市に住む女性会社員Kさんは30代前半。昨年末、7年余り勤めた小さな出版会社を退職した。その2か月ほど前の深夜、突然のパニック性の発作に襲われていた。救急車で運ばれ、入院。医者からは「仕事からの避難」と診断された。
「心の病」がもっとも多いのは30代。そんな調査結果を今年7月、財団法人社会経済生産性本部(東京都渋谷区)が発表した。2002年から隔年で実施している「メンタルヘルスの取り組み」に関する3回目のアンケート。計34問の質問に対し、上場企業218社の人事・労務担当者からの回答があった。
肝心の質問項目は「心の病の最も多い年齢層は」。回答に「30代」を挙げた企業が実に61.0%にも上ったのだ。「40代」19.3%、「10〜20代」11.5%、「50代以上」11.8%をはるかに引き離しての断トツである。
しかも、第1回(41.8%)第2回(49.3%)と着実に増加傾向にある。その背景について、同本部メンタル・ヘルス研究所の楠宏太郎研究員(44)は「与えられた仕事上の責任と裁量のバランスが崩れたまま、放置されてきたのが一因」と解説する。つまり、20代に比べると重要な仕事を任せられる半面で、40代のような権限が与えられることがない。それがストレスをもたらしているというのだ。
■「成果主義」の功罪
Kさんの職場では半月ほどで辞めてしまう後輩もいた。仕事の面白さを教えることができていればと悔やんだが、自分自身、余裕がなかった。笑いさえも失われていった社内。40代の上司はしばしばバブル時代の武勇伝を披露した。
1976年生まれの大卒が就職活動を迎えた1998年。その時期に日本社会の一つの転換点はあったと、帝塚山学院大教授(犯罪精神医学)の小田晋さん(73)は指摘する。
自殺者が3万人を超え、国内総生産(GDP)は2年連続で前年比マイナスに。そして、前年の1997年には武田薬品工業が日本最初とされる制度の導入に踏み切っていた。今日では9割の企業が採用したとも言われる「成果主義」である。
「それは悪平等をなくし、競争を刺激するとされました。しかし、毎日が勝ち残るための戦いです。これはきついですよ」。小田さんは言葉を続ける。「将来への希望に社員間で格差が生じ、職場の活性度はむしろ低下してしまったのです」
こうした環境が、30代の「心の病」の増加に拍車をかけた。派遣社員、非正社員らの雇用を促進した小泉純一郎内閣の労働政策の影響も、小田さんは指摘する。正社員の数が抑制されることになったためだ。30代には手足となる部下はもちろん、責任を分かち合える仲間も数少ない。
一つの法則があるそうだ。不景気になると仕事の一時的負担が減るため、ストレスはかえって減るという。だから、景気が上向いたとされる日本社会には逆の現象が加速されうる。「30代への圧力がさらに高まり、『心の病』は増えるばかりでは」。小田さんは危惧するのだった。
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