ひきこもりに関する実態調査:内閣府

内閣府は、2010年2月ひきこもりに関する実態調査を実施し、その結果を2010年7月発表しています。

今回の調査の目的は、ひきこもりに該当する人がどの程度存在するか、どのような支援を必要としているかを把握し、地域支援ネットワークの形成を促進するための基礎資料とすることにあります。

調査項目は、37に及びます。調査結果については内閣府発表の資料(http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/pdf_gaiyo_index.html)をご覧頂くとして、今回の調査の企画と分析を担当した各委員のコメントから一部を引用してご紹介します。

明星大学大学院人文学研究科長の高塚雄介氏は、ひきこもりを生む社会的背景を次のように述べています。
今日の社会では内的世界を適切な言語に置き替え、他者を説得できるコミュニケーション能力を育むことが当然視され、結果的にはすべからくディベートをもなしうる人間にならなければならないかのような雰囲気が生まれている。つまり、人間関係をうまく構築したり営むことができなかったり、きちんと言葉で意思表示をできないことは、あたかも欠陥商品として放逐されかねない社会環境が進行していることに、もっと目を向けてみる必要があるのではないだろうか。

中部学院大学大学院人間福祉学研究科教授の吉川武彦氏は、ひきこもり状態をもって精神疾患の一症状ということはできないとし、ひきこもりについて次のような認識を示しています。
それ(注:ひきこもり)は他者や社会との関係をうまく構築できないために“現実から引き下がる”状態と言えるものであり、“明快”な逃避ではなく「ひきこもる」逃避と言えよう。この“現実から引き下がる”行動を適応的であるか否かという視点で見ると、自我の崩壊を防ぐ意味では適応的行動であり現実社会と離れているという意味では不適応的行動ということができる。

筑波大学大学院人間総合科学研究科教授の松井豊氏と日本学術振興会特別研究員の渡部麻美氏は、ひきこもり群のコミュニケーションの特徴と対策について次のように述べています。
ひきこもるきっかけは不登校や職場不適応など多様であっても、人づきあいが極端に苦手で、人との接触を恐れる態度は共通している。カウンセラーや精神科医が話し相手になっている人も2割弱にとどまっており、友人関係や地域社会とのつながりは薄い。この人々の対人関係に対する苦手意識や人間不信感に対して、それぞれの地域社会が何らかの対応や対策をとることが必要と考えられる。(中略)その際、ひきこもる人々が採っているパソコンメールやwebサイトなどのコミュニケーション手段も積極的に利用することが求められよう。

(2010年8月17日掲載)
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