躁うつ病とミトコンドリア機能障害

ミトコンドリアとは、細胞の中で活動に必要なエネルギーを作り出している構造体(細胞小器官)です。細胞の生死の決定など、生命にとって極めて重要な役割を果たしています。

ミトコンドリアの機能障害を原因とする病気の一つに、ミトコンドリア病があります。難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/)によると、主に心臓、骨格筋、脳などに異常を生じ、疲れやすく長い距離を歩けない、意識を失って手足が麻痺するなど様々な症状を現す疾患で、次第に筋肉の力が弱くなったり、脳や心臓の機能が低下したりする場合もあるようです。

ミトコンドリアの機能障害と躁うつ病(双極性障害)との関係を明らかにした研究があります。理化学研究所が2006年4月18日付プレスリリースで発表したもので、名古屋大学との共同研究による成果です。

従来より、躁うつ病患者においてミトコンドリアの機能障害が見られること、ミトコンドリア病には躁うつ病を伴う場合があることが知られており、研究チームはこれらの点に着目。脳にミトコンドリアの機能障害を持つマウスを作製して、行動を分析しています。

その結果、眠らずに動き続けたり、行動量の顕著な変化といった行動異常が確認され、躁うつ病患者に見られる「躁」「うつ」の波と非常に似ていることが明らかにされています。

さらに、これらの行動異常は、リチウムの投与によって改善し、逆に、躁うつ病患者が服用すると症状が悪化する三環系抗うつ薬の投与によって異常性が顕著になったといいます。ミトコンドリアの機能障害と躁うつ病が関連していることを、強く示唆するものといえます。

躁うつ病の発症メカニズム解明や新薬開発につながることが、今後期待されます。

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(2010年9月30日掲載)
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