ダブルバインドとは?
ダブルバインド(double bind)は、統合失調症の発症原因を説明するために米国の文化人類学者グレゴリー・ベイトソンが1956年に提唱した概念です。その後の精神医学や精神療法の理論に大きな影響を与えています。
ダブルバインドは、「異次元の相矛盾する二つのメッセージを受け取った者が、行動不能に追い込まれた状態」(広辞苑)などと一般的に定義されています。「異次元」の部分については、ベイトソンは「階層(の違い)」「等級(の違い)」などの表現を用いています。
ベイトソンは、ダブルバインドという強度の呪縛的状況に捕らえられた環境の中に、統合失調症的症候が現れ進行すると考えています。また、統合失調症の発症原因は、家族内の特異な相互作用(コミュニケーション様式)に存在すると考えています。
ダブルバインドは、家族関係(特に母子関係)という抜き差しならぬ関係の中で成立します。抜き差しならぬ関係だからこそ、たとえば、「母親が子供に(実際は偽装の)愛を示し子供が近寄って行く」と「母親が身をかわす」というような場面で、「母親の愛」と「母親の身のかわし」の相矛盾する二つのメッセージを受け取った子供(この子供をベイトソンは「犠牲者」と表現)は、混乱し、どちらのメッセージに反応したら良いのか分からない状況に陥ります。なぜなら、この相矛盾する二つのメッセージには、生存を脅かす意味が含まれているからです。
母親の愛を信じても罰せられ(愛の喪失)、信じなくても罰せられる(生存の危機)。このダブルバインドという解決不能のジレンマが、子供を苦しめます。子供は母親との関係を維持するために、矛盾については何も言わず、母親の真意を探ることを諦め、自分自身を欺きます(偽装の愛だと感じても、それを封じ込める)。こうして、子供は、状況の真実の姿を捉えようとする欲求を根本から崩されて行きます。そして、自己防衛のために、統合失調症的な行動を示し始めます。
ベイトソンは、幼児期から繰り返しダブルバインドに引き入れられた子供は、その状況からの脱出が極めて困難だと考えています。また、このような子供においては、相手の真意を認識する能力や自分の真意を表現する能力など、対人関係を維持するうえで必要なコミュニケーション能力が育ちにくいと考えています。
【参考文献】
G・ベイトソン著 佐藤良明訳
「精神の生態学」(新思索社)
(2011年1月26日掲載)
ダブルバインドは、「異次元の相矛盾する二つのメッセージを受け取った者が、行動不能に追い込まれた状態」(広辞苑)などと一般的に定義されています。「異次元」の部分については、ベイトソンは「階層(の違い)」「等級(の違い)」などの表現を用いています。
ベイトソンは、ダブルバインドという強度の呪縛的状況に捕らえられた環境の中に、統合失調症的症候が現れ進行すると考えています。また、統合失調症の発症原因は、家族内の特異な相互作用(コミュニケーション様式)に存在すると考えています。
ダブルバインドは、家族関係(特に母子関係)という抜き差しならぬ関係の中で成立します。抜き差しならぬ関係だからこそ、たとえば、「母親が子供に(実際は偽装の)愛を示し子供が近寄って行く」と「母親が身をかわす」というような場面で、「母親の愛」と「母親の身のかわし」の相矛盾する二つのメッセージを受け取った子供(この子供をベイトソンは「犠牲者」と表現)は、混乱し、どちらのメッセージに反応したら良いのか分からない状況に陥ります。なぜなら、この相矛盾する二つのメッセージには、生存を脅かす意味が含まれているからです。
母親の愛を信じても罰せられ(愛の喪失)、信じなくても罰せられる(生存の危機)。このダブルバインドという解決不能のジレンマが、子供を苦しめます。子供は母親との関係を維持するために、矛盾については何も言わず、母親の真意を探ることを諦め、自分自身を欺きます(偽装の愛だと感じても、それを封じ込める)。こうして、子供は、状況の真実の姿を捉えようとする欲求を根本から崩されて行きます。そして、自己防衛のために、統合失調症的な行動を示し始めます。
ベイトソンは、幼児期から繰り返しダブルバインドに引き入れられた子供は、その状況からの脱出が極めて困難だと考えています。また、このような子供においては、相手の真意を認識する能力や自分の真意を表現する能力など、対人関係を維持するうえで必要なコミュニケーション能力が育ちにくいと考えています。
【参考文献】
G・ベイトソン著 佐藤良明訳
「精神の生態学」(新思索社)
(2011年1月26日掲載)
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