災害時の心理反応と精神疾患

被災者に生じる心理反応や精神疾患には、次のようなものがあるとされています。

■トラウマ

■悲嘆、罪責、怒り
  • 死別、負傷、家財の喪失などによる悲嘆
  • 罪責(自分だけが生き残ったこと、適切に振る舞えなかったこと)
  • 周囲に対する怒り(援助の遅れ、情報の混乱)
    うつ病不安障害

ストレス
  • 避難・転宅(避難所や仮設住宅での生活、集団生活)
  • 日常生活の破綻(生活再建の困難、就労や学業の困難)
  • 新たな対人関係の負担(情報や援助を受けるための対人接触)
  • 被災者として注目されることの負担
    ⇒疲労、焦燥感、気分の落ち込み、うつ病、心身症、身体化障害(身体表現性障害の一つで、検査をしても原因となる身体の異常が見当たらず、吐き気、しびれ、痛みなど自覚的な症状を呈し、日常生活に支障を来す重度の慢性障害)

これらの心理反応や精神疾患は、時間の経過とともに変わって行きます。時期ごとの特徴は、次のとおりです。

■初期(災害発生後1か月まで)
初期においては、被災者の症状が、不安、不眠、取り乱し、動悸、息切れ、発汗、興奮、感情鈍麻など多彩で不安定なため、精神医学的な診断が難しいとされています。なお、PTSDなどの診断が付くのは、少なくとも1か月以降のことであるとされています。

■中長期(災害発生後1か月以降)
中長期的には、一部の被災者の症状が慢性化し、PTSDをはじめとする精神的不調が長引く恐れがあるとされています。これまでの事例では、特に被災程度の激しい地域において、災害発生後半年以内にPTSDに罹患する割合は、部分PTSD(フラッシュバックや悪夢などの再体験症状、回避・麻痺症状、過覚醒症状は診断基準を満たさないが、PTSD反応が部分的に示される場合の呼び名)を含めると30〜40%に達するとされ、この中の半数程度は自然回復するものの、残り半数は慢性化するとされています。また、PTSD以外の問題としては、慢性的な集中力の低下、社会的な不適応、アルコール依存などがあるとされています。

【出典】
「自然災害発生時における医療支援活動マニュアル」
(新潟県中越地震を踏まえた保健医療における対応・体制に関する調査研究)

「災害時地域精神保健医療活動ガイドライン」
(厚生科学特別研究事業)

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(2011年3月26日掲載)
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