災害時の精神医療(具体的対応)

災害時の精神医療については、被災者、地域、医療者・支援者に分けて、具体的に次のような対応が求められています。

■被災者に対して
  • 話を聞くことは、被災者を落ち着かせる上で効果的である。最も良い聞き手は、家族、親族、友人である。そういう人との連絡が取れるように、落ち着いて話すことができるような環境を持つことができるように配慮する。
  • 医療者が話す場合、被災者に話すことを促したり、感情を表現させるような誘導(デブリーフィング※)はPTSDを誘発することがあり、すべきでない。また、話しているうちに興奮するなどの状態の悪化が見られたときには、中断し、その後のケアを約束する。
  • 災害後1週間ほどは、症状の変遷が激しく診断が確定しにくいので、対症的な安静をはかる。安全な環境の実現と、サポートによる安心感の提供を行う。また、可能な限り安眠の確保に努めるべきであるが、余震があるときなど、眠ることへの恐怖もあるので、その点に配慮する。
  • 既往精神疾患の増悪、医療機関の被災による断薬に注意する。
  • 入眠剤・抗不安薬は、心的依存を形成しないように、頓用で与えることが望ましい。
  • 現実の災害や復興に関する情報提供を十分に行う。
  • 災害によって新たにもたらされた疾患の診断は、約1か月時点までに確定する。
  • ハイリスク者は、家屋を喪失した者、職業基盤を喪失した者、災害弱者(乳幼児、高齢者、身体障害・知的障害を持つ者、日本語を母国語としない者)や災害弱者のケアをしている者、女性、精神疾患の既往のある者などである。

■地域に対して
  • 心理反応についての情報提供を行う。その際、精神症状の説明文を被災者が一人で読むとかえって症状が誘発されるおそれがあることに注意する。講演会などで対面で説明するのが望ましい。
  • 資料を配付するときには、自然回復、対処方法、受診のタイミングの判断の仕方、受診方法などについて十分に説明をし、いたずらに不安を煽らないようにする。

■医療者・支援者に対して
  • 医療者・支援者は、災害現場での遺体の目撃、過剰な業務ストレスによってメンタルヘルスが悪化しがちである。業務内容、時期を明確にし、1週間以上にわたるときにはローテーションなどの工夫が必要である。
  • 派遣中の不眠が派遣後のストレス症状と相関するので、睡眠確保が重要である。
  • 派遣後のケアは、業務上の慰労会などが中心となりがちであり、心理的なケアは行われていないのが現状である。派遣者のほとんどはそうしたケアが必要だと感じているので、その面での配慮が必要である。

※デブリーフィング(debriefing)とは、ストレス反応の悪化防止やPTSDの予防を目的として、災害時に体験した内容やその時の感情を被災者に語らせる急性期介入(災害発生直後〜数週間)をいいます。現在、ストレス反応の悪化防止やPTSDの予防の効果は、否定されています。

【出典】
「自然災害発生時における医療支援活動マニュアル」
(新潟県中越地震を踏まえた保健医療における対応・体制に関する調査研究)

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(2011年3月29日掲載)
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