災害時のトラウマからの回復

過去の災害時の経験から、たとえ一時的に精神が不安定になったとしても、被災者の多くは、自然に軽快して行くとされています。したがって、地域全体に対して講じるべき精神保険医療対策は、この自然回復のプロセスを支援することを軸とするのが実際的であると考えられています。災害時のトラウマからの自然回復を促進する要因としては、次のような事項があげられています。

  • 身体的安全の確保
  • 二次的災害からの保護(地震の後の火災、有害物質による汚染など)
  • 住環境の保全
  • 日常生活の継続(学校、仕事、日常的家事など)
  • 経済的基盤確立への展望(職業の確保、家屋の復旧など)
  • 生活ストレスからの保護(避難先での生活上のストレス、取材など)
  • 災害、援助に関する情報提供
  • 支援者による現地の巡回
  • 被災者が「手の届くもの」と感じられる支援
  • 被災者からの要望、質問に対する迅速な回答
  • 心理的な変化に対する情報提供・教育(症状だけではなく、健全な状態や回復時の状態についても情報を与えること)
  • 相談先の明示(ホットライン、相談窓口)

逆に、自然回復を阻害する要因とは、被災者に二次的なトラウマを与え、日常生活の安定を脅かすような刺激であるとされています。災害時のトラウマからの自然回復を阻害する要因としては、次のような事項があげられています。

  • 生活再建の遅れ
  • 避難先での生活環境の悪化、プライバシー確保の困難
  • 家族・知人の死傷、消息不明
  • 乳幼児、高齢者、障害者、傷病者などの災害弱者が家族に居る、または自分がそうである
  • 単身である、家族以外に話し相手がいない
  • 本人の意に反する取材活動
  • 警察、行政、保険会社などによる事情調査

【出典】
「災害時地域精神保健医療活動ガイドライン」
(厚生科学特別研究事業)

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(2011年5月11日掲載)
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