統合失調症の原因遺伝子

理化学研究所と科学技術振興機構は2007年11月13日付プレスリリースで、うつ病と並ぶ代表的な精神疾患である統合失調症の発症に関与している新たな原因遺伝子を発見したと発表しています。

統合失調症では、幻覚や妄想などの精神症状の他に、周囲の不必要な雑音などが意識に上らないようにシャットアウトする感覚フィルター機能に障害があるため、不必要な信号が大脳皮質に過剰に伝達され、思考障害や困惑などの症状を起こすとされています。

この感覚フィルター機能の障害の程度は、大きな音刺激の直前に小さな音刺激(プレパルス)を与えると驚愕反射が抑制されるという生理現象(プレパルス抑制)の程度を測定する検査で評価することができます。なお、プレパルス抑制の低下は、統合失調症のなりやすさに関係があると従来から考えられています。

研究チームは、プレパルス抑制の良好な系統、低下している系統のそれぞれのマウスのゲノムの差異を調べ遺伝子解析を行ったところ、プレパルス抑制に関わる遺伝子として、不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)アラキドン酸に結合するタンパク質を規定する遺伝子(Fabp7遺伝子)を検出しています。

また、統合失調症患者の死後の脳を調べたところ、この遺伝子に対応するヒト遺伝子(FABP7遺伝子)が、統合失調症発症にも関係していることが判明。さらに、このFABP7遺伝子の発現が脳の発達の一時期(胎児期)で低下することによって、神経新生(脳細胞の元になる神経幹細胞が分裂して脳内ネットワークに不可欠なニューロン細胞などに変化するプロセスをいいます)が減少し、プレパルス抑制の低下を来す結果が示されたといいます。

今回の研究結果から、胎児期の不飽和脂肪酸の代謝不全が統合失調症の発症原因となる可能性があり、妊娠中の不飽和脂肪酸の適正摂取と統合失調症の発症予防の関係の見極めが、今後の重要なテーマになると研究チームでは考えています。

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(2011年5月14日掲載)
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