精神疾患とDISC1遺伝子

慶應義塾大学は2011年5月12日付プレスリリースで、統合失調症うつ病など複数の精神疾患の候補遺伝子である「DISRUPTED-IN-SCHIZOPHRENIA-1」(DISC1,ディスク1)が、学習や記憶を司る脳の海馬の形成過程において必須の機能を果たしていることを明らかにしたと発表しています。

DISC1は、統合失調症やうつ病を多発する家系で変異が起こっている遺伝子として発見・注目され、脳の大脳新皮質の形成過程において神経細胞の移動を制御していることが従来の研究で明らかにされています。一方、海馬の形成過程についてはそれ自体に未解明な点が多く、DISC1の機能についても、大きな謎の一つだったといいます。

今回の研究では、マウスの脳を用いて、海馬の形成過程においてDISC1がどのような機能を果たしているか、また、その機能が阻害されるとどのような影響が生じるかについて、子宮内胎児の脳に遺伝子を導入する特許技術を利用して調べています。

その結果、DISC1をノックダウンしてDISC1タンパク質の量を減少させたところ、海馬で生まれた神経細胞の移動や配置に異常が確認され、逆に、DISC1を導入してDISC1タンパク質の量を回復させると、正常に戻ることが確認されています。研究グループではこれらの結果を基に、DISC1が海馬の形成過程において必須の機能を果たしていると結論付けています。

ストレスなどの環境因子が統合失調症やうつ病などの精神疾患の発症に関わっていることは広く知られていますが、同じストレスであっても、発症する人もいれば発症しない人もいます。これは、DISC1のような特定の遺伝子の変化がもたらす脳の構造の微細な異常の有無に関わっている可能性があります。今後このメカニズムの解明が進むことにより、統合失調症やうつ病などの精神疾患の病態理解や、新たな治療法開発につながることが期待されています。

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(2011年5月18日掲載)
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