精神科医師に求められる能力

全人的医療とは、患者をいかなる場合においても、病んでいる臓器に目を向けるだけでなく、病気を抱えた一個の人間として捉える総合的な医療です。これは、精神科医療に限らない、医療全般のあるべき姿だと思います。

全人的医療の必要性を痛感し、受容・支持・保証を基盤とする医療面接法を創始した英国の心身医学者バリントは、患者が訴える症状は氷山の一角であり、多くの問題が陰に隠れていると考えました。また、医師は、患者が訴える症状を分析し、解釈しなければならないが、その分析と解釈は、患者と医師との良好な人間関係に基づく共同作業であると考えました。

患者と医師との良好な人間関係は、患者の医師に対する全幅の信頼と、医師の患者に対する受容とから成り立つもので、このような医師の開かれた態度を、バリントは「医師という薬」と呼んでいます。

では、タイトルの精神科医師に求められる能力とは、具体的に何か。一例として、神奈川県立精神医療センターが作成した資料『精神科専門医研修プログラム』から引用してご紹介します。

  • 患者を全人的に理解し、患者及び家族と良好な関係を確立できる。
  • 疾患の概念と成因仮説を理解し、患者の病態を把握できる。
  • 症状を的確に把握して診断し、治療計画を立案できる。
  • 症状や病態の把握のために補助検査法を依頼、評価できる。
  • 薬物療法、身体療法、精神療法について習得し、実施できる。
  • 心理社会的療法、精神科リハビリテーション、及び地域精神医療・保健・福祉など関連分野について理解し、連携や依頼ができる。
  • 精神科救急における病態を理解し、対処できる。
  • 特に児童・思春期、高齢者、物質依存症、症状性・器質性精神疾患の領域について理解を深め、リエゾン・コンサルテーション精神医学を実施できる。
  • 法と精神医学(鑑定、医療法、精神保健福祉法、心神喪失者等医療観察法、成年後見制度等)について理解を深め、文書作成に参加できる。
  • 医の倫理、安全管理、多職種によるチーム医療について理解し、具体的な場面で対処できる。

(2012年1月2日掲載)
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この記事へのコメント
1. Posted by ナナ   2012年03月01日 04:24
私はこのサイトの「精神科医に求められること」には感服した。けど、日本ではとても難しいの、まだ。私はOTの学校に行ってた。特別養護老人施設、老人保険介護施設、特別精神閉鎖病棟、上尾中央総合病院のOT科には実習にも行った。9割が脳卒中のリハビリ。でも、いろんな所で見たけど、チームワークがあれば!って痛感した。医者、看護師、介護士、OT、PT、ケースワーカー、薬剤師、社会福祉士…みんなで組まないとダメだ!って、ひよっ子OTでも思ったよ。職業別に上下あったりしていがみ合う所もたくさんあったから。得意な役割が違うだけなのにね。だから、さっきの感服した記事は私が18からの理想そのものだった。そんな場所、日本には無いと諦めてた。また医療に関わるなら救急救命「ER」が出来た、アメリカでも行くかーって。でも、志してる人も動いてる。まだまだこれから。また、医療の現場に戻りたい私がいます。どんな形でも。
2. Posted by 運営者どすこい   2012年03月01日 07:19
ナナさん
特に「得意な役割が違うだけ」は、本当にそう思う。
ナナさん自身も、まだまだこれから!
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