心的外傷後成長(PTG)とは?

心的外傷後成長(PTG:Post-Traumatic Growth)とは、近年提唱されている概念で、心的外傷(トラウマ)を体験した後ポジティブな心理状態へと変化を遂げる、つまり、心に傷を負った人がその後人間的な成長を遂げることをいいます。

命に危険が迫る大規模な災害や、事故、暴行、脅迫などによるトラウマを体験した場合、これまでは、心的外傷後ストレス症状(PTS:Post-Traumatic Stress symptom)や心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post-Traumatic Stress Disorder)に目が向けられて来ました。

また、PTS・PTSD後にQOL(生活の質:Quality Of Life)を回復する過程においては、トラウマの消失が主体となると考えられて来ましたが、近年、PTGという新たな心的過程の存在が実証されています。これは、トラウマを乗り越え、人間的な成長を遂げることによって、QOLを回復するという過程です。

PTGとPTS・PTSDは、対立する概念ではなく、一連の過程に存在します。PTS・PTSDを経てPTGが起こり、PTS・PTSDの程度が高いと、PTGの程度も高いという正の相関も報告されています。

ネガティブな状況認知はQOLを悪化させ、ポジティブな状況認知はそれとは逆の結果をもたらす、これは容易に想像がつきますが、問題は、具体的にどうすれば良いかということです。ただ、PTGという心的過程の存在が実証されたことは、一つの大きな希望に繋がることだと思います。

【参考資料】
2012年2月10日付プレスリリース
「大規模災害における被災者のこころの健康を守るための研究」
(自治医科大学、株式会社クロス・マーケティング)

<関連記事>
トラウマ形成のメカニズム解明

(2012年3月11日掲載)
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この記事へのコメント
1. Posted by さくら   2012年04月24日 03:16
私はPTSD、うつ病、不安障害を患っておりますが、PTGという概念を初めて知りました。
PTSDを受けた後のQOLは、PTSDの種類や周りの支援と本人の元々の性格にもよるのでしょうね。
私の場合は、家庭がらみなので、なかなか一筋縄ではいかず苦しみが大きいですが、今回の記事で少しでも希望が持てそうです。
ありがとうございます。
2. Posted by 運営者どすこい   2012年04月24日 06:56
さくらさん
はじめまして。どすこいです。
家庭内に要因がある場合は、身近なだけに恐怖や憎しみを強く抱きやすいと思いますし、一人逃げ出すわけにも行かず、心の休まる場がないのは本当に辛いと思います。
またいつでもお話しくださいね。
3. Posted by saori   2012年11月20日 11:24
私はptsdを発症して、数年がたちます。
今も外来へ定期的に行っているのですが。
先日外来へ行ったとき、主治医に言われました。
貴女はptgだねと。
主治医はとてもつらい道のりだったけど、貴女は強くなったねと。
帰宅して、サイト等でptgについて調べました。
そして書いてあることに対して、涙があふれました。
悲しみの涙は今まで数えきれないほどに流してきましたが、喜びの涙はとても久しぶりに流しました。
周りの人たちに対して、ありがとうと伝えていくことが今後の目標です。
4. Posted by 運営者どすこい   2012年11月20日 12:55
saoriさん
はじめまして。どすこいです。
主治医の言葉、嬉しいですね。
「ありがとう」が、さらに良い循環を生むと思いますよ。
5. Posted by とみー   2012年12月04日 20:52
私もPTSDに苦しんでいた数年前にPTGという概念を知り、それがきっかけで、自分の未来図を明るく描くことができるようになりました。なかなか現実は思うようにはいかないですが、PTGを知っているというだけで、過度に悲観的にならずにすむような気がします。多くの人に知ってもらいたいですね。
6. Posted by 運営者どすこい   2012年12月05日 06:54
とみーさん
はじめまして。どすこいです。
同感です。多くのPTSDに苦しむ人に知ってもらいたいと私も思っています。
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