死別による悲嘆が遺族にもたらす影響

遺族は、伝統的な葬送儀礼や法事などを通じ、次のような経験をし、死別という悲しみを克服できるとされています。

  1. 参列者から慰めを受け、死別を少しずつ受容し、一連の葬祭行事で心理的な区切りを付ける
  2. 参集する親戚や知人の数が多いほど、外出する機会が増え、社会との交流を持つ
  3. 死者との「続く絆」を肯定的に再形成することで、生き続ける意味を再発見する

しかし、核家族化などによって、また、経済的合理性という名の下で、密葬や直葬が増え、その結果、(1)慰めの場、(2)交流の機会、(3)「続く絆」(死者との精神的な繋がり)を失い、遺族の悲嘆が緩和されない事例が多く見られるとされています。

このような現代の状況下、京都大学は2020年9月28日、研究成果として、家族や友人との死別による悲嘆が遺族にもたらす精神的・身体的な影響などを調査した結果を発表しています。

研究グループは今回、葬送儀礼を行う僧侶等の協力を得て、2〜8か月以内に家族を亡くした240世帯にアンケートを配布し、165件の完全な回答を得、分析の結果、次のようなことが明らかになっています。

  • 死別悲嘆が深刻なほど、生産性が落ちて、仕事の病欠が増え、精神的・身体的な疾患を抱え、より多くの医療福祉を頼る(医療費がかかる)傾向がある
  • 葬送儀礼に満足し、健全な形で死者との関係を保てた遺族は、上記のような傾向が低く、逆に葬送儀礼に不満を抱え、死を受け入れられない遺族ほど、後々精神的・身体的な不調をきたし、医療福祉に依存する傾向がある
  • 低所得層の遺族(収入が激減した遺族を含む)は、生産性の低下や投薬量の増加傾向が見られる
  • 葬儀を省略したり密葬にしたりした遺族は、葬送儀礼にかかる費用が高いと回答し、長期的には医療福祉を頼り、多くの医療費を支払う傾向にある

今回の研究成果が、今後、遺族に対して適切な経済的支援を行うなど、日本社会の死別悲嘆による影響を軽減する政策の立案につながることが期待されます。

【出典】
京都大学 研究成果(PDF)

◇雑感
新型コロナによる肺炎で妻の岡江久美子さんを亡くした大和田獏さんの姿は痛々しかった。感染防止のため、火葬にも立ち会えず、遺骨箱が玄関前にぽつんと置かれた場面は今でも忘れられない。ご遺族の心境は分からないが、死別を少しずつ受け入れることができているのだろうか。

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(2021年1月7日掲載)
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