心を癒す「トリプトファン」

うつ病の治療に用いる抗うつ薬の一つであるSSRIは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの機能を亢進させる作用を持ちます。

セロトニンは、トリプトファンから合成されます。トリプトファンは赤身の肉に多く含まれていますが、卵や牛乳などにも多く含まれています。

肉などを食べないで、トリプトファンの摂取量が減ると、血液中のトリプトファン濃度が低下し、そして脳のトリプトファン濃度も低下することから、うつ病にかかりやすくなる可能性があります。寛解状態にあるうつ病患者にトリプトファン摂取を制限すると、うつ状態が悪化するという研究結果も発表されています。

ここで重要なことは、トリプトファンを脳に運ぶのはブドウ糖であるということです。そこで、炭水化物や甘い物を適度に摂らないと、トリプトファンが脳に入らず、うつ状態を引き起こしたり、うつ状態を悪化させることも考えられます。甘い物を適度に摂ることは、脳の栄養補給という意味でも大切ですが、トリプトファンを脳に輸送する意味でも大切だといえます。

最近の脳の画像診断法であるPETを用いた実験によると、脳内のセロトニン合成能力は、女性の方が男性よりも低いことが明らかにされています。特に、トリプトファンが欠乏すると、男女差はさらに顕著となるようです。うつ病は女性が男性の約2倍多いこととセロトニン合成能力との間に、相関関係があるのかもしれません。このようなことから、最近の女性のダイエット志向は、精神状態を安定化することに逆行するのではないかと思っています。

セロトニンが欠乏して、セロトニン活動が低下すると、衝動的になり、不安、イライラが起こり、抑うつ気分になりやすくなります。

なお、セロトニン神経は、ほかの神経からの刺激と関係なく、自分で活動しています。覚醒時には2〜3回/秒、リズミカルなインパルスを発し、ちょうど脳のBGMのようにセロトニン神経が作動していると「元気」な状態が維持できるのだそうです。

(2008年4月10日掲載)
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